読感「わくらば日記」
【わくらば日記 / 朱川 湊人】
前に読んだ「かたみ歌」と同じ空気を感じたので、借りてみました。久々の読書ということもあり、のんびりできるものを読みたかったので。
昭和30年代の東京が舞台ということですが、何となく下町の風情って、誰にとっても懐かしく感じてしまいますね。
私も別にそこで育ったわけでもないのに、懐かしい風景としてイメージが浮かんできます。
この物語は2人の姉妹を中心に描かれていて、主人公は元気娘の妹・ワッコちゃん、
話の鍵を握るのは体は弱いけれど美人で透視ができる姉の鈴音。
主にこの2人の周辺で事件が起きる→姉さまの透視で解決するという流れで各話が成り立っています。
しかし事件が起きるには、それなりの理由と人間ドラマが絡んでいるところがこの本の魅力ですね。
殺害現場をリアルに鈴音が透視するような凄惨な場面もあるのですが、最近の殺人事件のような無益なものがありません。私は「流星のまたたき」
が1番好きな話でした。原爆症という単語に、一瞬戸惑ったのですが、そうだよね昭和34年なら、
戦争が終わってまだいくらも経っていない時代だと再認識。笹森さんが姉さまに残した100枚の年賀状にほろりときました。
終わりに姉さまと茜ちゃんが世を去る…という非常に気に掛かることがさらりと書かれているのですが、
これは続編が出るのかな?この先待ち受ける「哀しい運命」って一体…。